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「 魂の復活 」

ナイノア・トンプソン

 

 

僕の祖母はほとんど純粋のハワイ人でした。

ハワイ社会の中で育ったので、最初の言葉はハワイ語だったし、

学校が始まるまではたくさんのハワイの文化や風習を

学びました。ところが学校に通い始めたとたん、

ハワイ語でしゃべったりフラを踊ったりするだけで

鞭打たれたのです。自分達の文化は劣った文化だという

価値観がその頃に植え付けられ、その影響で、

僕はハワイの伝統文化から全く切り離されて育ちました。

高校を出るまで、ハワイ人がどこから来たかなどと

いうことは全く知りませんでした。しかし、魂のどこかで

遠い祖先とのつながりは感じ続けていました。

 

人々が数千年前にどういう方法でこの島まで

やって来たのかを知ろうとしたとき、

「伝統の歌にある大航海のことを信じよう。カヌーを

復元してそれを照明しよう」 と誰かが言い出しました。

それに対して、「数千年前の未開人にそんな旅ができる

はずがない」 というのが西洋近代の見方でした。

この運動が始まったとき、これほどまでの 魂の復活 を

予見した者は誰ひとりいませんでした。

しかし、魂は失われたのではなく、眠っていただけ

だったのです。そのことは誰もが感じていましたが、

どうしたら良いのかが分かりませんでした。

カヌーがタヒチまで行き、帰って来たときには、

たくさんの人々の魂の力が一気に自然につながったのです。

信じられないほど大きな文化的、言語的、芸術的復興が

起こりました。人々は経済的な理由でこんなことを始めた

のではありません。我々の中に眠っていた数千年の

記憶を取り戻し、遺伝的にも、魂の面でも、祖先との

つながりを取り戻したのです。子供の頃、伝統とは無縁だった

僕でさえ、そのことを強く感じるのです。

 

我々の祖先であるポリネシアの人々は、数千年前に、

自然界のサインだけを使って何千キロもの海を

旅するすばらしい航海術を持っていました。

正しい方角や、自分の位置を知るために星や太陽、波などを

利用するのですが、そのほとんどは目を用いて

読み取ります。ところが全く目の使えない状況が時として

生じるのです。例えば、厚い雲に覆われた夜です。

波だけでも見えればそれによって方角を知ることも

できますが、それすらできない闇夜があります。

そんな時に頼れるのは、海との関係で生まれる

自分の身体内感覚だけなのです。

目を閉じ、意識を内側に向け、波の鼓動を感じ取って

方角を知るのです。それは僕にはとても難しいことでした。

「百聞は一見にしかず」というのが我々の文化でしたから。

一方マウ(ナイノアの師匠)は、三千年間絶えることのなかった

遺産の継承者だと言えます。僕は彼と共にいて、

彼を見つめ、古代の人々が自然界といかにして波長を

合わせていたかを学ぶ必要がありました。

 

自分に対する、あるいは自分たちの文化に対する

誇りや自信を取り戻すためには、まず、過去に負った

痛みをしっかりと見据えることです。過去に文化的虐待があって、

ハワイを傷つけたのだとしたら、その傷の痛みこそが、

新しい文化を創造するための大きな力となるのです。

今、地球全体が大きな文化的変革の時代にあると思います。

目新しいものを追うのではなく、過去とのつながりを

取り戻すことが新しい文化を作り出すのだと思います。

 

僕が最も感銘を受けるのは、祖先たちのバランスのとれた

生き方です。彼らは無限の宇宙から海の水の一滴まで、

全てが大きな生命の一部分であり、全てがつながって

生きていることをよく知っていました。

土地や自然に対して、良いことをしても悪いことをしても、

必ず自分たちに還ってくることを理解していました。

陸や海は、我々の人生よりも遥かに永続的なものであり、

我々はひとときそこを間借りして生活しているに過ぎない

のだから、その場所を大切にすることが何よりも大切だ

ということがよくわかっていました。彼らには、

土地を私有するといった概念すらなかったのです。

もし、全地球のため、全生命のために何かをしたいと

思うのならば、まず、自分自身の身近な所から

始めるべきだと僕は思います。それが結果として、

全てのためになっていくのです。

 

ナイノア・トンプソン(外洋カヌー航海者)

1953年ハワイ生まれ。

伝統に基づいて復元された古代の遠洋航海カヌーを駆って、海図、羅針盤、磁石などの

一切の近代器具を使わず、星を読み、波や風を感じることで正しくナビゲーションして、

かつて祖先達が数千年前に渡ってきた、タヒチからハワイまでの五千キロの海の旅を

現代に蘇らせた。

この航海は、ハワイの先住民の人々に、かつてない勇気と誇りを与え、自然の大いなる

営みと調和しながら生きてきた祖先達の、高度な技術的、精神的文明のあり方を学び

なおそうとする運動に結びついていった。

はるか彼方の「見えない島を、見る力」を養うことこそ、21世紀を生きる子供達にとって

一番大事なことだと、ナイノアは信じている。

 

 

龍村監督  魂のきれいな人


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